【時事英語に学ぶ】(その13)米国のベネズエラ政策。乗るか反るか

こんにちは(こんばんわ)。アップアンドダウンです。美味しいお酒を呑み、良い映画を観て、素晴らしい本が読めれば幸せです。

 

"A senator as ouster in chief”/Marco Rubio takes the lead as the U.S. tries to dislodge the Venezuelan leader (NTY International Edition 20190128 P4 [News Analysis] by Peter Barker and Edward Wong)

 

  昨日に引き続いて米国の対ベネズエラ政策について、NYT国際版2019年1月28日付分析記事です。特に、マルコ・ルビオ連邦上院議員に焦点を合わせてより深掘りしています。

 

★全文掲載やリンク貼りはしません。ご興味があれば、NYTサイトにどうぞ。

 

記事タイトルの試訳は、「失脚司令官になった上院議員」という感じでしょうか。サブタイトルは、「アメリカがベネズエラの大統領を排除しようとする中、ルビオ上院議員が先頭を切る」くらいで。

 

        この女性をトランプさんに紹介した人です。

 

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  1月28日までのところ、ベネズエラにおけるニコラス・マドゥーロ大統領及び同大統領の選挙不正を弾劾して暫定大統領を自称しているホアン・グアイド国会議長という対立構図には変わりがありません。前者は軍部の後者は反大統領派の民衆が支持しています。ベネズエラ国外に目を向けてみると、米国主導の下で北米・中米・南米の国の殆どはマドゥーロ弾劾・グアイド支持で固まっています。また、旧宗主国のスペインに加え、フランス、ドイツ、英国も共同歩調をとっています。これに対してマドゥーロ政権を支持するのは、ロシア、中国、キューバなど。キューバについてはベネズエラの石油と引き換えに同国における反体制派の弾圧を支援したと言われています。この点については、同日付のNYT国際版に“Cuba looms large in Venezuela crisis”という記事があります。

 

  米国内では、ベネズエラに強硬姿勢を取ることについては超党派的な支持があります。その中で、事実上の「中南米担当国務長官」になっているのが、ルビオ連邦上院議員です。2015年大統領選挙共和党予備選ではお膝元のフロリダ州でトランプ候補(当時)に敗れて撤退したわけです(この選挙戦でトランプ氏はルビオ上院議員を「ちびマルコ」と揶揄しています。)。しかしルビオ上院議員は変わり身が早い。トランプ大統領当選の一か月も経たずして、好を通じたマイク・ペンス副大統領と共にベネズエラの反体制政治家の夫人であるリリアン・ティントリ氏(人権活動家であり著名なTVタレント)トランプ氏の会合をセットします。会合後、トランプ大統領はティントリ氏、ペンス大統領、ルビア議員と共に写真に収まった姿をツイッターで拡散してティントリ氏夫君の釈放を提唱。その後、ルビオ上院議員は月に1回はトランプ大統領に会ってベネズエラの状況を伝えます。この他、ポンペオ国務長官ボルトン国家安全保障担当大統領補佐官からの支持も得、NSCキューバ系米国人の西半球担当部長を得て、対ベネズエラ強硬政策の根回しができたというわけです。

 

   Like other Cuban-American leaders in Florida, Mr. Rubio has long stood against Mr. Maduro and his predecessor, Hugo Chavez, whose socialist governments have been aligned with Havana. He has also been a leading voice pressing the administration to take tough measures against China and Russia, traditional allies of Cuba, as well as other human right violators.

 

Mr. Rubio’s staunch opposition to Mr. Madurohas so gotten under the skin of the hard-liners in Venezuela that a senior official in Caracas       reportedly ordered an assassination attempt against the Senator in 2017.

 

(試訳1)

フロリダ州の他のキューバ系米国人指導者と同様、ルビオ上院議員は長年、マドゥーロ大統領とその前任のヒューゴ・チャベス大統領に強硬姿勢を取ってきた。これら両大統領の社会主義政権は、キューバとこれまで連携してきた。同上院議員はまた、トランプ政権が中国及びロシアに対して他の人権侵害国と同様強硬な措置をとることを迫る主要人物であった。この両国は、キューバの伝統的な同盟国である。

 

ルビオ上院議員のマドーロ大統領への変わらぬ反感はベネズエラの強硬派の癇に障るものであったので、ベネズエラのある有力者は2017年、同上院議員への暗殺計画を命令したと伝えられる。(試訳1終わり)

 

  暗殺指令を出したと言われたのはベネズエラ政権与党の副党首だということです。ポンペオ国務長官がこの人物に制裁措置を課した際、ルビオ上院議員ツイッターにオレンジの囚人服を着た囚人を載せてからかっています。

 

このようなルビオ上院議員主導の対ベネズエラ強硬策ですが、一部のプロ筋では危なっかしさが指摘されています(また、同上院議員の影響力が過大評価されているとの指摘もあります)。ルビオ上院議員は、グアイド氏の主導する運動がベネズエラでの変化をもたらすことを期待します。

 

Mr. Rubios approach has generated unusually bipartisan support, including from leading Democrats like Senators Richard J. Durbin of Illinois and Robert Menendez of New Jersey. But some veteran government officials and analysts expressed concern that the administration has been too ad hoc: It failed to line up support in advance from the Venezuelan military, which may be critical to Mr. Maduro’ssurvival. It has given no indication of a clear plan to protect the United States Embassy and its personnel against possible retaliation.

 

And while Mr. Rubio insists there are unspecified contingency options that he will not reveal, analysts say the Trump administration does not seem prepared with a Plan B in case Mr. Madurodefies the pressure and hold onto power.

 

(試訳2)ルビオ上院議員の手法は、通常では見られない超党派の支持を得ている。支持者には、リチャード・J・ダービン上院議員イリノイ州選出)やロバート・メネンデス上院議員ニュージャージー州選出)といった民主党の指導的政治家も含まれる。しかし、経験のある政府関係者やアナリストの中には、トランプ政権が場当たり的過ぎるのではないかとの懸念を表明する者もいる。例えばトランプ政権は、対ベネズエラ強硬政策を取る前に、マドゥーロ大統領の生き残りに死活的に重要かもしれない同国軍部の支持を取り付けなかった。トランプ政権は、マドゥーロ政権からのありうべき報復に対して米国大使館及びその人員を保護するための明確な計画を示唆することがなかった。

 

そして、ルビオ上院議長が強く主張するところによると、公開できない幾つかの緊急時に選択する計画があるということであるが、何人かのアナリストは、マドゥーロ大統領が圧力をものともせず権力を離さない場合の「プランB」をトランプ政権が用意しているとは見えないと述べている。(試訳2終わり)

 

ベネズエラ米国大使館及びその人員を如何に保護するか云々というのは、イランによる米国大使館占拠事件(1979年)が念頭にあるのでしょう。流石にそこまでやるかという話ですが。

 

 仮にマドゥーロ大統領が政権に固執し、ベネズエラ情勢が膠着または流動化した場合、事態を打開するために軍事力の投入が検討されるのでしょうか。その際、米国軍は兵士がそのような戦いで死ぬことを容認するのでしょうか。このような騒動に米国の外交・軍事資産が使われることが日本にとってどのような影響を及ぼすのか注視しなくてはなりません。

 

  なお、同日付NYT11面には、同紙常連コラムニストのブレット・スティーブンス氏が”Venezuela is a socialist catastrophe”と題してコラムを書いています。このコラムは、米国の左派知識人(典型的にはノーム・チョムスキー)が激賞した故チャベス大統領の社会主義政策が当たりまえのように破綻したことを説明しつつ、トランプ政権のグアイド国会議長支持の政策を支持し、同議長の安全確保から現政権幹部の辞任・キューバ亡命などのよ具体的な処方箋を提示しています。

 

 逃げ場所を無くした敵は死にもの狂い・自暴自棄になります。敢えて逃げ道を残すことによって、事態を解決することが「大人の知恵」であるように見えますが・・・・

 

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