【時事英語に学ぶ】(その14)サウジアラビア、そして日本

こんにちは(こんばんわ)。アップアンドダウンです。美味しいお酒を呑み、良い映画を観て、素晴らしい本が読めれば幸せです。

 

今回は、サウジアラビア関係。

 

''Tortured for wanting to drive(NTY International Edition 20190129 P1 [Opinion] by Nicholas Kristof)

 

“Tortured for wanting to drive”(NTY International Edition 20190129 P1 [Opinion] by Nicholas Kristof)

 

★全文掲載やリンク貼りはしません。ご興味があれば、NYTサイトにどうぞ。

 

 NYT常連コラムニストのニコラス・クリストフ氏のコラム。2019年1月29日付のNYT国際版です。クリストフ氏は当初中国専門家で売っていたと思いますが、現在は国際問題全般のコラムニストということで、アフリカなどにも行ってコラムを書いています。今回のコラムもそうですが、世界の各種の問題について米国が積極的に関与することを求める傾向があると思います。


  モハマド・ビン・サルマン(MBS)皇太子が実権を握っているサウジアラビアは、カタール封鎖、イエメン攻撃などの対外政策の積極性が目立っています。また、「ワシントン・ポスト」紙記者のジャマル・カショーギ氏(クリストフ氏の友人でもあるようです。)の在イスタンブールサウジアラビア総領事館内での殺害(及び死体損壊)事件で同皇太子の関与が疑われるなど、ニュースになることが最近になって増えています。


 国内的には、他の王族への圧力を加えると共に、女性の運転を認めるなど、「改革派」のイメージがMBSにはある。しかし、トランプ大統領、ポンペオ国務長官、クシュナー大統領補佐官(大統領女婿)はMBSに騙されているとクリストフ氏は主張します。既に死亡してしまったカショーギ氏ではなく、女性の権利を主張したためにアラブ首長国連邦で拉致され、サウジ国内で同様の女性と同じく拘禁されて拷問されているルジェイン・アル・ハズルール(Loujain al-Hathloul)さんのために米国の指導者は声を挙げるべきとも主張します。

 

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 Trump, Secretary of State Mike Pompeo and Jared Kushner bet big on the Saudi crown prince, Mohammed bin Salman, but they were bamboozled. M.B.S. isn’t a great reformer, and he isn’t coming clean about Khashoggi’s murder.
 Nor is he releasing Hathloul, who, along with others, had peacefully and persistently campaigned for years to allow women the right to drive.


(試訳1)トランプ大統領、マイク・ポンペオ国務長官、それにジャレッド・クシュナー補佐官はモハメッド・ビン・サルマンに大きく賭けているが、彼らは欺かれている。MBSは偉大な改革者ではないし、カショーギ殺害に関してシロというわけでもない、


 また、ハズルールさんを釈放することもない。彼女は、他の女性と同様に、女性に運転の権利が付与されるように平和的かつ粘り強く運動を続けてきたのだ。(試訳1終わり)


  私にとってbamboozleというのは恥ずかしながら初見。18世紀頃の辞書に現れたのが最初のようで、語源については定説がないようです。まあ、欺かれるくらいしか適当な訳が想起できないですね。


  米国にとってサウジアラビアが特殊な存在というのは理解ができます。イランという国が米国の不倶戴天の敵(イスラエルにとってもですが)であるなら、イランとの間で地域大国の座を争っているサウジアラビアを味方にすることは自然でしょう。更に言えば、サウジアラビアは、巨額の米国製兵器を買ってくれる大のお得意様です。このようなこともあって、中東では、アメリカ・サウジアラビアイスラエルという奇妙な協力関係ができています。なお、以前のサウジアラビアは単にアメリカ製兵器を買うだけで、戦闘機・爆撃機を買っても飾り物だったようですが、最近は実際にイエメンで使っています。米国は軍事顧問を送り込んでサウジ側を種々教育しているのですが、明らかに民間人と思われる標的を誤爆するなどの事件を多々起こして、一部米国政府関係者を悩ませているようです。


  Saudi politics is murky, but there are whispers that the crown prince will not necessarily be elevated to king on death of his father. Yet Trump, Pompeo and Kushner are acting as M.B.S.’s protector and backers ? so the world could be stuck with M.B.S. as a destabilizing and oppressive ruler for the next half century.


     America doesn’t have much leverage to improve human rights in countries like China, Venezuela or Iran, But we have enormous leverage over Saudi Arabia, because it depends on us for its security. Yet Trump, Pompeo and Kushner refuse to use that leverage. 


(試訳2)サウジ政治は不透明で先が見通し難いが、皇太子は父の死後必ずしも国王に即位するとは限らないとの囁きも聴こえる。しかし、トランプ大統領、ポンペオ国務長官、クシュナー補佐官はMBSの保護者あるいは支援者として振舞っている。その為に世界は、今後半世紀の間、不安定かつ専制的なサウジアラビアの為政者と付き合っていくことになるかもしれない。


  米国は、中国、ベネズエラ、イランといった国の人権を改善するための梃子を有していない。しかし、我々は安全保障において我々に大きく依存しているサウジアラビアに対しては大きな梃子を有している。しかし、トランプ、ポンペオ、クシュナーという面々はその梃子を使うことを拒んでいる。(試訳2終わり)


 別段難しい英語ではありません(たぶん、bamboozleという言葉も英米圏の教育ある人物であれば普通に使う言葉だと思います。)ので、中身についてコメントします。トランプ大統領等がモハメド皇太子の保護者を任じれば今後半世紀同皇太子がサウジで権力者であり続けるんですかね?トランプ大統領自身、再選されない可能性もあるのに?と正直首を傾げますね。仮に、MBSが生き残るとしたら、それは米国全体の意思ではないでしょうか。


  もう一つですが、中国等について米国は梃子を有さないと言いますが、ベネズエラについて言えば、米国は既に政権転覆寸前まで突っ走ってますよね。そして、中国についても、貿易戦争を仕掛ける力を米国は持っていると思うので、クリストフ氏のこの辺の部分については事実誤認のような気がします。それはそれとして恐ろしいのは、クリストフ氏のような「リベラル派」でも米国では、安全保障面で米国に依存している国であれば、米国の意思を押し付けることが可能だと考えている節があることです。安全保障面で米国に依存している国って、例えば、我らが祖国ですよ。


  我が国には遠い話から我が国に多少ひきつけて考えてみました。


  お立ち寄りいただき、ありがとうございました。