【時事英語に学ぶ】(その15)トランプ再選に黄信号?

こんにちは(こんばんわ)。アップアンドダウンです。美味しいお酒を呑み、良い映画を観て、素晴らしい本が読めれば幸せです。

 

Border fight complicates 2020 path for Trump/Setback on wall funding has some Republicans considering a challenge (NTY International Edition 20190129 P1 by Alexander Burns, Jonathan Martin and Maggie Haberman)

 

★全文掲載やリンク貼りはしません。ご興味があれば、NYTサイトにどうぞ。

 

 アメリカ政局の話ばかりで、いい加減お腹いっぱいなのですが、1月29日NYT国際版1面におけるトランプ再選に黄信号という記事です。トランプ陣営から言わせると「フェーク・ニュース」ということになるのかもしれませんが、共和党周辺への取材はそれなりに綿密に行なっています。

 

 史上最長の連邦政府機能停止という事態になったにも拘わらず、トランプ大統領は、核心的な支持者が最重要課題としていた「メキシコ国境の壁建設」のための予算を獲得することができませんでした。その結果として、浮動層(swing voters)の怒りを買ったのみならず、2016年の大統領選挙の際には全てを固めていた共和党支持者からの支持も80%台に落ちている状態です。更に、大きなニュースとして、トランプ大統領の長年の政治面での顧問であるロジャー・ストーン氏が司法妨害などで起訴されたことが大きな痛手と見られています。

 

 President Trumps defeat in his border-wall standoff with Congress has clouded his already perilous path to a second term in 2020, undercutting Mr. Trumps cherished image as a forceful leader and deft negotiator, and emboldening alike his Democratic challengers and Republican dissenters who hope to block his re-election.

 The longest government shutdown in history inflicted severe political damage on the president, dragging down his poll numbers even among Republicans and stirring concern among party leaders about his ability to navigate the next two years of divided government. Mr. Trump, close associates acknowledge, appears without a plan for mounting a strong campaign in 2020, or for persuading the majority of Americans who view his negatively to re-elect him.

 

(試訳1)トランプ大統領が議会との間の国境壁についての対決で敗れたことで、既に相当危険になっている2020年の第二期への道に曇が懸かることになった。力強いリーダーであり有能な交渉者であるいうトランプ大統領の祝福されたイメージは台無しになり、同大統領の再選を阻もうとする民主党の(大統領職への)挑戦者や共和党の反抗者の気持ちを大胆なものにしている。

  米国史上最長の政府機能閉鎖は大統領に深刻な政治的打撃を与えた。共和党支持者の間でも大統領支持率が下がった。共和党幹部の間では、政府が民主・共和両党で分裂している中でトランプ大統領が今後2年間政権を運営できるかについて懸念が広がっている。トランプ大統領は、側近が認めるところでは、2020年に向けて強力な選挙活動をするため、あるいは、自分を否定的に見る多くの米国人に再選のため投票させるよう説き伏せるための計画を有していないように見える。(試訳1終わり)

 

  (上の訳文では、deft「有能な」と取り敢えず訳したのですが、平均的な英語話者がdeftという一語から思い浮かべるイメージに「有能な」が合うかどうかには確信が持てません。)

 

 民主党陣営では、予備選への出馬表明をする政治家が続出しています。トランプ陣営としては、ジョー・バイデン元副大統領(知名度はあります)や新進の女性政治家など数名を特に警戒しているようです。それ以上にトランプ陣営にとって心配なのは、共和党予備選においてトランプ大統領が挑戦を受けることです。共和党予備選に名乗りを上げそうと言われているのは、以前の記事でも取り上げられたホーガン・メリーランド州知事です。同知事には野心たっぷりな保守的なシンクタンクも支援に動いています。

 

Other Republicans view Mr. Trumps political stumbles as an opportunity to lure a challenger into the race, with Mr. (Larry) Hogan (, Governor of Maryland) emerging as a new subject of their effort. At a December conference hosted by the Niskanen center, a right-of-center think tank, Mr. Hogan spoke briefly with William Kristol, an implacable Trump critic in the conservative press, who argued that the president is weaker than widely understood, people briefed on the conversation said.

Mr. Hogan, 62, is set to meet more formally in the coming weeks with Mr. Kristol and Sarah Longwell, a Republican strategist helping marshal opposition to Mr. Trump. Mr, Kristol and Ms. Longwell have been meeting with Republican donors and potential challengers, sharing focus-group and polling data about the presidents vulnerability with what they call Reluctant Trump Voters according to a copy of their presentation reviewed by The New York Times.

 

(試訳2)その他の共和党関係者は、トランプ大統領の政治的躓きを大統領レースに挑戦者を引き込むチャンスだと見ている。その中で、(メリーランド知事のラリー・)ホーガン氏がこれら共和党関係者の取り組みの対象として浮上している。中道右派シンクタンクである「ニスカネン・センター」が昨年12月に主催した会議においてホーガン知事は、保守派メディアでトランプ批判を続ける論客であるウィリアム・クリストル氏と短時間会談した。この会談について説明を受けた複数の人物によると、クリストル氏は広く理解されているよりも弱体であると論じた由である。

   62歳のホーガン知事は、今後の数週間のうちにより公式な形でクリストル氏、それに、トランプ大統領への反対勢力の結集の支援をしている共和党系の政治戦略家であるサラ・ロングウェル氏とより公式に会う予定である。クリストル、ロングウェル両氏は、共和党系の資金提供者やトランプ大統領に挑戦する可能性がある複数の政治家と会合を重ねてきた。この中で、両氏は、いわゆる「消極的トランプ支持者」に関するトランプ大統領の弱みを説明する特定の有権者集団や世論調査のデータを共有している。これは、本紙が目にすることができた両氏の説明資料によるものである。(試訳2終わり)

 

  (英訳について。「potential challengers」を「トランプ大統領に挑戦する可能性がある複数の政治家」と意訳したのはやり過ぎかもしれませんが、このようにした方が分かりやすくはあります。)

 

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(ウィリアム・クリストル氏)

 

  もちろんトランプ陣営も手を拱いているわけではありません。先週ニューメキシコ州で開催された共和党の会合ではトランプ大統領を支持する決議が出されたということで、少なくとも上辺では共和党は一枚岩のように見えます。アメリカ大統領選挙は、候補の資質や政策が重要なことは間違いありませんが、最重要要素の一つは政治資金です。

 

  いわゆる「地盤・看板・鞄」という「三バン」は、大衆民主主義国家ではどこでも重要なわけで、トランプ氏についてはTVで培った知名度と大変な集金力があったことから、以前の記事で触れたルビオ上院議員などについても、地盤のマイアミ州での予備選で撃破することもできたという訳です。現職の大統領陣営としては、大統領としての知名度及び仕事をしていくことすなわち選挙運動という利点を活かしたいところです。例年になく多数が予備選に参加しそうな民主党側がお互いに叩き合って選挙資金を使い果したのちに、①抜群の知名度と②政権の実績と③潤沢な資金にものを言わせて民主党候補を吹っ飛ばすというのがゲームプランでしょう。しかし、②に黄信号が灯った現在、本来であれば大統領陣営に資金提供することが当然視されそうな金満家は様子見の状態です。

 

        Still, Republican donors will want to know just how damaged the president may be by the end of this year before they truly commit to challenge.

        Asked if he would be willing to raise money for a primary opponent to Mr. Trump, Stanley Druckenmiller, an investor based in New York who has given millions to Republican candidates, said, If I thought such a candidate would be a good president and had a realistic chance of securing the nomination, yes, of course.

 

(試訳3)共和党を支持する資金提供者は、トランプ大統領に挑戦する政治家への支持を本気で固める前に、今年の終わりまでにトランプ大統領がどの程度打撃を得るのか知りたいと思うだろう。

   今までに複数の共和党候補者に数百万ドルの献金をしてきたニューヨーク在住の投資家スタンレー・ドラッケンミラー氏は、予備選でのトランプ大統領の対抗馬の為に資金集めをする気があるかと問われ、「もし、そういう候補が良い大統領になりそうで、大統領候補指名を確保する現実性があるのなら、もちろん。」と答える。

                                                                              (試訳3終わり)

 

        勝ち馬に乗りたいのは、どこの国でも同じですね。

 

  日本の国益に直結する米国大統領選挙。今後とも要注目です。取り敢えずは、3週間の「『国境の壁』停戦」後の情勢が見ものです。