「たった一人のビブリオバトル(漫画部)】「ゴールデンカムイ」〔その2)

こんにちは(こんばんわ)。アップアンドダウンです。美味しいお酒を呑み、良い映画を観て、素晴らしい本が読めれば幸せです。

 

さて、「ゴールデンカムイです。「その1」では、この作品が「たそがれ時の万華鏡」のようだ、と申しました。

 

ここで私が想起せざるを得ないのが、ジャレッド・ダイヤモンド氏の「昨日までの世界」という著作です。

 

 

ダイヤモンド氏は、「銃、病原菌、鉄」や「文明崩壊」を始めとする一般向け学術書で著名です。同氏は、ニューギニア研究が元々の専門です。そこから、「何故、西洋文明が非西洋文明を凌駕したのか」「文明はどう隆盛して、どう滅ぶのか」という問いが生じます。この二つの問いへの答が上記のの二つの本です。

 

    「昨日までの世界」の中で、ダイヤモンド氏は現代社会とそれ以前の社会を比較します。端的に言えば、現代社会とはそれまでの社会と異なって規模が飛躍的に大きいものです。そのような社会の構成員はお互いを知らず、商取引、紛争解決などはお互いを深く知らずとも成立します。

 

    係る社会には大きな利点があります。紛争が自力救済されることなく、公権力が強制力をもって紛争を解決するため、血で血を洗う終わり無い戦いから国民が解放されます。前近代社会の構成員の移動範囲が限定されるのに対し、現代社会では敵対的部族を警戒せずに地球の裏側にすら行けます。

 

    しかしながら、現代化の為に喪失したものもあります。遊びを通じて子供が生存と自活の方法を学ぶ術は失われました。乳幼児を親密度の高い方法で育てる育児方法は、特に欧米社会で失われました。紛争の解決を関係者の感情に配慮して行い方法も、大体において失われました。

 

     ザックリ言うなら、これらの前近代社会の知恵を現代社会により良く活かすことができるのではないかというのがダイヤモンド氏の主張です。係る知恵は、記録されたか辛うじて残存する前近代社会に見い出すことが出来るというのです。そして、この「昨日までの世界」では、アイヌ文化も係る社会の一例として挙げられています。

 

   そして、「ゴールデンカムイ」は、アイヌ文化についての多くの文献を参考にしつつ作られています。この漫画を読むに当たっては、ストーリーは勿論ですが、文化人類学的な文脈も意識するといいのではないかと感じた次第です。

 

   まだまだ続きます。 

 

    お立ち寄り頂きありがとうございました😊