【美術・建築探訪】新・北斎展 3月17日 (その3)
こんにちは(こんばんわ)。アップアンドダウンです。美味しいお酒を呑み、良い映画を観て、素晴らしい本が読めれば幸せです。美術や建築にも興味があります。
さて、北斎です。「新・北斎展」は大々的に宣伝がされてますから、拙ブログが集客に貢献するわけはないので、これまで・これからの記述は、ほぼこれから北斎を更にみていくための備忘録のようなものですね。
今回の「新・北斎展」では、497点の画などが出展されています。もちろん、これらを一遍に出展する訳にはいかないので、前期A(1月17日~1月28日)、前期B(1月30日~2月18日)、後期A(2月21日~3月4日)、後期B(3月6日~3月24日)に分けて出展されました。それぞれにおいて、約150点程度が出品されている感じです。
前の記事でも書きましたが、一人の人物を一言で述べることは大変難しいですよね。特に、「北斎」のような人物は一つの巨大な「現象」と言えるわけで、この「現象」を個々の鑑賞者が独自のメガネを当てて見るだけで、当然ながら違ったモノが見えるというわけでしょう。
北斎は酒もタバコもやらなかったそうです(その代わりに甘党で健脚。)。北斎の家系を私は知りませんが、遺伝に加え、そのような身体によろしくないモノを遠ざけることが90歳という当時では規格外の長寿を得た一因だと思います。
芸術家としての北斎が70年の画業の中で進化・変遷を続けて来たのを今回ほんの少し垣間見たわけですが、そこで私が感じたのは「力を出し惜しみしない姿勢」です。ここで私が想起するのが、「書きあぐねている人のための小説入門」で作家の保坂和志氏がプロの作家になるために持つべき姿勢です。
「人間の能力というのは奇妙なもので、最初の一作のために全力を注ぎこんだ人には、二作目がある。しかし、力を出し惜しんで、第一作を書きながら二作目のネタを残しておいた人には、二作目どころか一作目すらない。」(草思社版・30P)
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北斎は、正に、70年の画業の全ての場面で全力を出し切ろうとしたのだと思います。そして、何かを表現する機会が与えられればどのような小さな機会でも全てを活かそうとしたわけです。北斎と言えば、「富嶽三十六景」(実際には、好評につき十景が追加されたそうです)や「北斎漫画」(「漫画」という言葉ができたのはこれが最初でしょうか。)が有名なのですが、「巨匠」となった後でも扇子や屏風に絵を描いている例が多数あります。どのような小さな機会であっても、与えられれば全力を尽くして絵を描く。高邁な理想を言うにせよ言わないにせよ、それが「絵師」だからです。
プロの目から見れば、北斎のテクニックについては色々言うべきところがあるのでしょう。しかし、一介のアマチュア(そして、他の分野での「プロ」であることを目指す人間)にとっては、区々たるテクニック論もさることながら、北斎の「姿勢」が参考になると思います。
ぼちぼち続きます。