【たった一人のビブリオバトル】佐藤忠男「黒木和雄とその時代」

 こんにちは(こんばんわ)。アップアンドダウンです。美味しいお酒を呑み、良い映画を観て、素晴らしい本が読めれば幸せです。

 昨夜、「エッセンシャル思考」を通読したのに続き、今朝(4月9日)は、相当昔に買った佐藤忠男黒木和雄ととその時代」を改めて通読しました。著者の佐藤氏は、1930年生まれの映画評論家であり、この本は2006年の著作です。この本のゲラチェックをしている時に黒木監督が急死したということです。 

父と暮せば

父と暮せば

 

  本は、アマゾンで出てきませんので、黒木監督晩年の代表作を・・・。 

 この本は、黒木監督と同世代である佐藤氏が黒木監督の映画界の系譜を代表作に触れつつ紹介していくというものです。「その時代」というのは、同年代の佐藤氏の時代でもあります。すなわち、「軍国少年」として育ち、敗戦とその後の混乱を経験し、インテリ青年のご多分に漏れず内外の左翼思想に憧れるかあるいは実際に行動して更に失望したという「時代」です。

 黒木監督の経歴はこのような感じですね。

 

ja.wikipedia.org

 ウィキを読んでしまうと、この「黒木和夫とその時代」を読まなくとも済んでしまうということになってしまうのですが、やはり、1930年という同年齢の映画評論家が書いた本には独特の匂いのようなものがあります。黒木監督の経歴は、岩波映画でPR映画を撮ることに始まり、ATGでの活動を経て、独立派の制作活動を経つつ、最終的には、「Tomorrow/明日」、「美しい夏キリシマ」、「父と暮らせば」及び「紙屋悦子の青春」という「戦争三部作」(あるいは四部作)で終焉を迎えるというものです。

 これら「戦争三部作/四部作」は、岩波映画において単なるPR映画に収まらないPR映画を描き、左翼や共産主義に対する幻滅が広がるまでの「革命近し」という(ソ連崩壊後の世界に生きている我々にとっては理解が困難な)時代精神の中で「キューバ革命」や「原子力戦争」を撮ってきた黒木監督が冷戦後の世界で折り合いをつけた作品であると思います。

 以上、とりあえっずっす!