【時事英語に学ぶ】米国における対中「冷戦」/左右両派の「呉越同舟」(20190608NYTオピニオン記事)

 こんにちは(こんばんわ)。アップアンドダウンです。美味しいお酒を呑み、良い映画を観て、面白い新聞記事と本が読めれば幸せです。新聞ネタも久し振りです。 

 

 今回俎上に乗せるのは、米国コロンビア大客員准教授(歴史)のオピニオン記事です。「Sunday Review」の長めの記事ですね。


www.nytimes.com

 

 色々書いてありますが、ポイントは、「米国では現在、対中『冷戦』が呼号されており、それは、左右両派を問わない」ということです。筆者は、この現状を冷静に分析しつつも、第二の冷戦を防ぐためには今発言する必要があると述べており、冷戦によらない対中関係を模索すべきとの考えです。

 

 左右両派を問わない対中強硬姿勢は、このように描写されています。

.... Now President Trump is escalating a trade war with China as politicians, policymakers and pundits from both parties urge him not to stop there. Senator Elizabeth Warren rejects America’s past “happy face” China policy, and Senator Marco Rubio tweets about China’s “comprehensive plan to achieve world domination.” Washington is gearing up for full-spectrum competition with the world’s No. 2 power. We may be witnessing the start of a Sino-American cold war.

(仮訳1)現在、トランプ大統領は中国との貿易戦争を加速している。そして、(民主・共和)両党の政治家や政策企画家、専門家はそこで留まるべきでないと促す。(民主党の)エリザベス・ウォーレン連邦上院議員は、米国の過去の「幸せ顔」対中政策を拒否する。そして、(共和党の)マイク・ルビオ(連邦上院議員)は中国の「世界制覇を実現するための包括的計画」についてツイートする。ワシントン(の米国政界中央)では、世界第二の経済大国に対する全党派挙げての競争が激しさをましている。中米間の冷戦の始まりを我々は実見しているのかもしれない。

 (注)太字部分は、英語式の韻を踏む三語繰り返しを訳出する試みです。

 

 Beijing must wonder what can satisfy Washington’s demands, beyond changing its regime or retreating from the world. We might find out from Vice President Mike Pence, who blasted Chinese “aggression” in an influential speech last October and is planning a follow-up, or from Kiron Skinner, who holds Mr. Kennan’s old post as director of policy planning at the State Department and who says she is formulating a Kennan-esque theory of the long “fight” with China.

(仮訳2)中国政府は、どうすれば米国の要求を満足させることができるかについて思いまどうに違いない。体制の変更あるいは世界から撤退以上のものだろうか。そのヒントは、マイク・ペンス副大統領の言動から得られるかもしれない。昨年10月の影響力あるスピーチ中国の「敵対的行動」を非難した同副大統領は、第二弾を準備している。または、キロン・スキナーの言動だろうか。(米国の対ソ冷戦を構築した)ジョージ・ケナンのポストであった国務省政策企画部長であるスキナーは、ケナン的な中国との長期的「戦い」の理論を構築しつつあると述べている。

 

 1970年以来、対中友好政策を推進してきた米国ではオバマ政権の後期から、中国に対する感情の悪化が見られますが、対中政策の変更はトランプ政権で先鋭なものとなります。広範な品目について対中関税を容赦なく引き上げる過激な対中貿易戦争は広く報道されています。この記事での指摘で面白いのは、対外積極策を志向する外交専門家などの思惑です。

  ...... (Mr. Trump's)  election caused foreign-policy mandarins to panic over “isolationism” and scramble to save American power. After banding together to defend the “liberal world order,” they have arrived at a surer solution: contain China. Beijing presents an ideal foil — a major adversary that justifies globe-spanning responses but doesn’t pose much immediate threat of war. On Capitol Hill, getting tough on China ranks among the few causes that unite Democrats and Republicans. Economic nationalists imagine jobs returning to America, free-traders think pressure will open up China, and everyone gets to sound tough on defense. Today’s climate reminds Senator Chris Coons of “the 1950s when there was no downside, politically, to being anti-Soviet.”

 

 (仮訳3)トランプ氏の(大統領)選出は、伝統的な外交政策専門家の間に「孤立主義」についてのパニックを巻き起こし、(世界における)米国のパワーを守るための緊急行動をとらしめた。「自由な世界秩序」を守るために結束した彼ら外交政策専門家は、確実な解決策に行きついた。中国の封じ込めである。中国は理想的な悪役である。世界を股にかけた対応を正当化する大物の敵であるにせよ、すぐには戦争の脅威をもたらすわけでもない。連邦議会では、対中強硬姿勢は民主党共和党を結束させる数少ない案件の上位を占める。経済的ナショナリストは雇用が米国に回帰することを想像する。自由貿易主義者は(米国からの)圧力によって中国が開かれると考える。そして、すべてが国防については強硬発言をするようになる。クリス・クーンズ連邦上院議員民主党デラウェア州)は、昨今の雰囲気は「政治的には反ソ連であることに何のデメリットもなかった1950年代を想起させる」と語っている。

 

 要するに、「呉越同舟」ということですね。これは、米国政治の冷徹な現状を表しているものだとは言えます。仮にトランプ大統領が再選された場合(その可能性は大だと思います。)には、超党派の対中強硬策は続いていくことになるのでしょうか。